日頃は、会誌充実のためにご協力いただきまして、誠にありがとうございます。ASLE-Jの研究活動を一層活発にするために今後ともよろしくお力添えをお願い申し上げます。
さて、『文学と環境』編集委員会では、次々号にあたる会誌第16号から、会誌のさらなる充実と活性化のために、従来の会員個人による投稿に加え、不定期で会員の責任編集による特集企画を組むことといたしました。以下、特集企画の趣旨を簡単に御説明し、第16号の原稿募集の概要をお知らせさせていただきます。
特集企画としては、すでにISLE(米国のASLEの学会誌)やMELUS (Multi-Ethnic Literature of the United States)などに、ある特定のテーマに関する数本の論文が(小)特集として掲載される例があります。このように、同一テーマを複数の論考によって多角的に論じる場を設けることで、単独の研究論文とは異なるかたちで、発想の展開の一助とすると同時に、研究テーマを共有する新たなネットワークが生まれる可能性を目指したいと思います。
学会誌で特集を組む場合、会員から原稿を募集し、査読するというかたちと、責任編集者が人選をおこない査読を介さずに原稿を集める、という二つの方法が考えられますが、会誌編集委員会では、(1)特定テーマに関する多角的な議論(2)会員間の研究ネットワークの促進、という前述の二つの目的に適した前者の原稿募集型を採用し、会員の皆様から原稿を募りたいと思います。
今後、会員から責任編集での特集企画が提案されました場合は、随時、会誌編集委員会で企画を検討し、会誌に組み込んでまいりたいと存じます。よろしくご協力のほどお願い申し上げます。次々号第16号におきましては、結城正美さんの企画による「境界の食風景」をテーマとする特集を組みたいと存じます。概要については裏面の原稿募集要項をご覧ください。原稿募集から刊行までのスケジュールは以下の通りです。
2011年 12月 原稿募集のお知らせ (ニューズレターと同送)
2012年 4月1日 概要締切 (概要を確認し、5月上旬をめどに採否の連絡)
10月1日 原稿締切 (責任編集者および編集委員による査読)
12月上旬 査読結果通知 (必要に応じて訂正の依頼)
2013年 3月上旬 完成原稿締切
4〜6月 校正(著者校正は初校のみ、字句の手直し程度)
8月 会誌刊行
特集のテーマをとおして会員間に新たな交流が生まれ、それがエネルギーとなり学会活動のさらなる発展が促されることと期待しております。ぜひ皆様の積極的なご参加とご協力をお願い申し上げます。
会誌編集委員会(中川・木下・高橋龍・小谷・加藤)
趣旨
「どんなものを食べているか言ってみたまえ。君がどんな人間であるかを言い当ててみせよう。」このブリア=サヴァランの金言が示すように、食べるというごく日常的な行為はアイデンティティの問題と深いかかわりを持ちます。言うまでもなく、何を食べるか食べないかという選択は、食をめぐる文化的、社会的、政治的、宗教的な意味づけから自由であるわけではありません。豚肉を好んで食べる人もいれば、宗教上それを食べ物とみなさない人もいます。からだに良いとわかっていても割高な生鮮食品に手を出せない低所得者層の食事は、高価な有機野菜に彩られたミドルクラスの食卓とは自ずと異なります。したがって、「どんなものを食べているか」によって「どんな人間であるか」が決まるだけでなく、その逆に、どんな人間(民族、階級、ジェンダー、等々)であるかということが食の風景を形づくっているとも言えます。
周知のとおり、現代の食生活を問題視する向きは小さくありません。ヒトの食性との調和という基準に照らすと1960年までが〈豊食〉の時代で、その後20年のスパンで〈飽食〉と〈呆食〉が到来し、現在は〈崩食〉の時代に入ったという指摘もあるほどです。外食・中食産業はもとより、サプリメントや健康食品の発展もあいまって、調理して食べるという食生活それ自体が崩壊の途上にあるとも言われます。私たちの食べるものは変わりました。食べ方も変わりました。たしかに食風景はめまぐるしく変化しているように見えます。では、それにともない、私たちが「どんな人間であるか」も変わったのでしょうか。それとも、さほど変わっていないのでしょうか。あるいは、アイデンティティや自己イメージの変化が食の変化を招いたのでしょうか。
本特集「境界の食風景」では、食風景の変化という現象を深く掘り下げ、個人や社会の食の営みがアイデンティティや価値観とどのような相互関係にあるのかという問題を、文学を題材として検討します。その際にキーコンセプトとして共有したいのが〈境界〉という概念です。
食べるという行為には常に境界がともないます。たとえば、何を食べものとみなすか、何が美味しくて何が不味いか、という判断は、食べもの/食べものではないもの、美味しい/美味しくない、を分け隔てる境界を設定することによってはじめて可能となります。一方、そもそも食べるという行為には、身体の外と内という境界を侵犯するはたらきもあります。人食の儀式などにうかがえるように、食べることをとおして自己と他者の境界が曖昧になるというのはその一例です。けれども他方で、食べものをめぐる境界設定は自分が何者であるかという認識と強固に結びついているという意味で、食べることは自己と他者との境界を明確にする行為でもあります。自己/他者、内/外をはじめ、精神/身体、理性/感覚、文化/野性、生/死……食はこうしたさまざまな境界を侵犯すると同時に明確にもします。
そのような境界の両義性をはらんだ食風景と向き合い、食とアイデンティティの相互関係に斬り込む論考を募集します。
特集テーマ 「境界の食風景」
責任編集者 結城正美(金沢大学) mryuki@staff.kanazawa-u.ac.jp
掲載予定数 序論と論文4本程度
査読形式 責任編集者および会誌編集委員による査読
概要・原稿提出先 〒920-1192 金沢市角間町 金沢大学外国語教育研究センター 結城正美
その他については、会誌の投稿規定に準じます。