エコフェミニズム/エコロジカルフェミニズム [ecofeminism / ecological feminism]

【理論編】

 エコフェミニズムという語は1974年、フランス人フェミニストのF・デュボンヌ(Françoise d'Eaubonne)の著書『フェミニズムか死か(Le Féminisme ou la mort)』で初めて使用され、誕生した。エコロジカルフェミニズムとも呼ばれる。デュボンヌは、現在ではフェミニズムの第三の波とも称されるエコフェミニズムを「エコロジー革命を起こす女の可能性」と定義づけていた。

 リブ期(70年代)にフランスで登場したエコフェミニズムは、その後、主としてアメリカで展開していった。フェミニズム期(80年代)のエコフェミニズムの論調は主として「自然破壊と女性の抑圧には関係がある」というものであった。その後に登場したポストフェミニズム期(90年代以降)のエコフェミニズムは、ポスト構造主義と同様、〈女性〉というカテゴリー内の多様性を主題化している。その結果、エコフェミニズムにクイアの視点を入れたクイア・エコフェミニズムなど、多様なエコフェミニズムが登場している。

 日本におけるエコフェミニズムは、80年代、主にI・イリイチ(Ivan Illich)の著作を通じて偏った形で輸入された。青木やよひが女性原理を称賛する前近代的なイリイチ流のエコフェミニズムを踏襲・流布した一方で、上野千鶴子はフェミニスト人類学・マルクス主義フェミニズムの立場から、青木の女性原理称賛が二項対立を温存し、さらには助長するものとして非難した。その結果として青木・上野論争が勃発、結局は1985年に上野が勝利した形となった。このためエコフェミニズムは、日本でその発展の契機を失った。

 H・イートンとL・A・ローレンツェン(Heather Eaton and Lois Ann Lorentzen)は、これまでの複雑多様なエコフェミニズムの主張を三つの流れに大別している。それらは、①女性は環境負荷をより多く被る ②西欧では女性と自然は概念・象徴的に結びつけられてきた ③女性は環境についての知識を多く持つ というものである。

 現在、エコフェミニズムの思想・理論は主に文学、環境社会学、開発学、哲学、宗教学といった分野で展開されている。文学分野で展開されているのが、エコクリティシズムにエコフェミニズムの思想・理論を導入した「エコフェミニスト批評」(例えばGreta Gaard and Patrick D. Murphyを参照)である。同批評では、テクスト内の女性/自然の表象とその効果、二項対立(男/女、文化/自然など)の脱/構築、などに焦点が当てられる。これらの観点から注目される作家として米国のT・T・ウィリアムス(Terry Tempest Williams)が挙げられる。

 

【実践編】

 エコフェミニズムの実践の国際的潮流については、1991年に「健康な地球のための世界女性会議」が米国フロリダ州マイアミで開催され、環境問題が女性の視点から初めて議論されている。その結果、「女性のアクション・アジェンダ21」が採択された。それは最終的に、1992年の地球(リオ)サミットで採択された「アジェンダ21」の第24章「環境と女性」として結実した。同様に1993年の世界人権会議、1994年の国連人口開発会議、1995年の北京女性会議などでもエコフェミニズムに関連した問題群が取り上げられている。

 さらに具体的な実践・運動には、女性たちが木に抱きついて森林を守ろうとしたインドの「チプコ運動」がある。また、ノーベル平和賞受賞者のW・マータイ(Wangari Maathai)を中心として、女性たちが数千万本の木を植えたケニアの「グリーンベルト運動」もある。日本では、60年代の北九州市の「青空がほしい運動」、70年代後半~80年代前半の滋賀県・琵琶湖の「せっけん運動」、80年代の石垣島の「石垣島新空港建設問題」に関連した運動などが環境と女性の観点から注目されている。

(森田系太郎)

 

参考文献

・青木やよひ『フェミニズムとエコロジー』[増補新版](新評論、1994)

・テリー・テンペスト・ウィリアムス『鳥と砂漠と湖と』石井倫代訳(宝島社、1995[原著:1992])

・上野千鶴子『女は世界を救えるか』(勁草書房、1986)

・Eaton, Heather, and Lois Ann Lorentzen, eds. Ecofeminism and Globalization: Exploring Culture, Context, and Religion. Lanham, MD: Rowman & Littlefield, 2003.

・Gaard, Greta, and Patrick D. Murphy, eds. Ecofeminist Literary Criticism: Theory, Interpretation, Pedagogy. Urbana and Chicago: U of Illinois P, 1998.

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